寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「先日いただいたワインのお礼です。ラベル一枚一枚にバラの絵を描いて下さりありがとうございました」
セレナはジェラルドとサーヤとの距離を詰め、驚くふたりに手渡した。
「お父様とお母様、そしてお姉様の花を刺繍しました。これしか得意と言えるものがないので……」
セレナはそう言いながら、王女時代馬に乗り剣を振り回す事も得意だったが、父も母もいい顔をしていなかったと思い出し、苦笑した。
ジェラルドとサーヤは、手渡されたハンカチの刺繍を食い入るように見つめた。
クローバーとパンジー。
ランナケルドの王と王妃を象徴する花が、セレナの手によって鮮やかに咲いている。
「セレナ……」
パンジーの花びらが淡い黄色からオレンジに変化するグラデーションは立体的で、その美しさにサーヤが涙ぐむ。
母として自らが教えなければならなかった多くの事を、セレナはアメリアから教わった。
刺繍も料理も、王女としてのマナーもそうだ。
クラリーチェばかりに気を取られ、母娘として得られるはずだったセレナとの大切な時間を放棄したのは自分だと、涙が溢れた。
「とても素敵ね……。いつの間にこんなに上手に……。それに、大人になっていたのかしらね」
ハンカチを握りしめ、サーヤは唇を震わせた。
綺麗に結い上げられた頭にティアラが輝いている。
王妃が身に着けるそのティアラに、セレナはずっと憧れていた。
両親とともに過ごす時間は少なかったが、公務の時には離宮から呼び戻されていた。
その時会うサーヤの頭には、このティアラがいつも輝いていた。
セレナにとって、このティアラは母と会える象徴だった。