寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「失礼します」
セレナはそう呟くと、サーヤに近づきティアラに手を伸ばした。
よく見ればほんの少し傾いていて、両手でそっと位置を調えた。
「遠くから見ていたよりもずっと綺麗……」
大きなダイヤの周りに小粒のルビーがいくつも埋められているティアラはとても華やかで優美だ。
間近で見ながら、セレナはほおっとため息を吐いた。
「このティアラが似合っているお母様にずっと憧れていました。いつか、もしも……私がランナケルドの女王になれたらこのティアラを譲っていただけるかと考えた事もありました」
思い返すように呟くセレナの表情はすっきりと明るい。
それでも、サーヤの瞳に浮かぶ涙に気づけば胸が痛む。
セレナの言葉にどう答えればいいのかわからないサーヤは、不安げにジェラルドと顔を見合わせる。
そんな両親に、セレナは小さく笑い、言葉を続けた。
「私がお母様と顔を合わせる時にはいつもこのティアラが輝いていて、お母様といえばこのティアラ。だから、自然と欲しくなったんでしょうね」
「そう……そうね」
くぐもった声で、サーヤは答える。
公務の時にしかセレナと会おうとしなかった事を思い出し、苦しい。
「あ、大丈夫です。今は仕方がなかった事だとわかっています。子供の頃は寂しかったんですけど、今は……」
セレナは言葉を区切り、セレナの腰を抱き寄り添うテオを見上げた。
成り行きを心配そうに見つめているテオの瞳に溢れている愛情に目を細めた。
大丈夫。
視線で伝えて、安心させるように頷いた。
そして、再び両親に向き直った。