寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「お父様とお母様がランナケルドのために力を尽くさねばならなかった事も、そのためにお姉様を守らなければならなかった事も、今は理解できています。結婚して、多少はふたりのご苦労もわかったつもりです。それに、私にはもう家族がいます」
セレナはテオの胸にいっそう体を近づけ、寄り添う。
愛する人の温かさがあれば、大丈夫だ。
「テオ殿下はもちろんですが、私を愛してくださる家族がいますから」
セレナは胸元に輝いているサファイアのペンダントに触れた。
ミノワスターの次期王妃としての象徴であり、いずれ国母となることを期待されている女性が持てる輝き。
そして、セレナを娘として愛すると言ってくれたロザリーの気持ちがこもった宝物。
輝きを見つめ、セレナはその手触りを楽しむ。
心穏やかに両親と向き合えるのは、このサファイアのおかげかもしれない。
ロザリー王妃がセレナに伝えた言葉のおかげで、セレナは笑顔で父と母に向き合え、これまでのふたりの葛藤を理解できるのだから。
「お母様のそのティアラは、お姉様に似合いそうですね」
セレナがバルコニーに視線を戻すと、互いの腰に手を回し、手を振るクリスティーナとカルロの後ろ姿がある。
「お姉様が着けているベールはお母様が結婚した時のものなんですよね。お姉様がおっしゃってました」
視線をクラリーチェに向け、セレナは呟いた。
今朝お祝いの言葉をクラリーチェに伝えた時、誇らしげにベールを見せるクラリーチェはとても美しく、セレナはほんの少し羨ましかった。
セレナが欲しいと思うほとんどはクラリーチェのものであり、セレナには手が届かないものだった。
その最たるものが、クラリーチェの婚約者だったテオだ。
手が届かないとわかっていたが、簡単に諦められなかった。