寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナはすれ違う人たちと言葉を交わしながら露店が並ぶ通りの奥にある食堂へと向かった。
その後ろを、ミケーレと騎士数人がついて歩く。
「もう、ついてこなくても大丈夫よ。アメリアのところでご飯を食べるだけだもん」
ぞろぞろ歩くのが嫌で、セレナは後ろを気にしながら面倒くさそうに顔をしかめた。
歩みを速め、ミケーレたちと距離を取ろうとするが、彼らも足を速め、セレナの後を追う。
「だから大丈夫だって。あちこちにミノワスターの騎士がいるし、何かあっても自分で何とかできる。新人の騎士よりも剣の腕はいいんだから」
ずんずん歩くセレナの言葉に、ミケーレはひるむことなくついて歩く。
その目はセレナを見ているわけでもなく、彼女の身の安全に気を配っているようでもない。
それに気づいたのか、セレナは眉を寄せた。
「な、なに? どうしてついてくるの」
セレナの問いに、ミケーレは歩くスピードを落とすことなく口を開いた。
「別にセレナ様の後を追っているわけではありません」
「は?」
「私たちも、アメリアが作るおいしい食事をいただきに行くだけです。セレナ様が自分の身は自分で守れることならみな承知しています」
淡々と答えると、ミケーレは小走りでセレナを追い越していく。
「ちょ、ちょっと、待ってよ」
「いえ、待ちません。アメリアのおいしいパンは、売切れ必至の貴重な物なので。お先に」
ミケーレはそう言うと、スピードを速めて走っていく。
騎士たちもセレナの横を通り過ぎる時に一礼すると、ミケーレに習い走っていく。
「どういうこと……? え、売切れ? やだ、絶対に食べたい」
セレナはミケーレたちの後を追い、アメリアのパンを目指して走った。