寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
子供の頃からセレナをかわいがってくれたアメリアだが、人の迷惑になるような事や、間違った事をした時にはかなり怖い。
「まったく……見た目は美しい王女様でいらっしゃるのに、騎士と同じ格好をなさって馬を乗りまわして……それはまあいいのですが。そろそろ落ち着いてくださいよ。ご結婚も近いようですしね」
「え? 結婚?」
「そうですとも。ミノワスターに嫁ぐための準備がいよいよ本格的に始まるようですよ」
アメリアはそれが当然だとばかりにそう言って、カウンターへと戻っていく。
「パンもスープもすぐにご用意しますね」
アメリアはミケーレに席に着くように指示すると、手際よく準備を始めた。
すぐにでもパンを食べられそうだ。
セレナは結婚という言葉を聞かされて、ずんと気持ちが重くなった。
わかってるけど、仕方ないけど、結婚するけど。
心の中でぶつぶつと繰り返し、トボトボとカウンターの席に着いた。混み合う店内で空いているのはそこしかなかったのだ。
唯一空いていたテーブル席にはミケーレたちがさっさと座り、おいしそうに水を飲んでいた。
「自分が私の護衛だってわかってるのかしら」
ミケーレたちを見ながら呆れた声で呟くと、隣に座る男がクスクス笑いだした。
ひとりごとを聞かれたと気づき、セレナは慌てた。
「ご、ごめんなさい。お見苦しいところをお見せしました」
座ったまま軽く頭を下げれば、隣の男の手がすっと伸び、カウンターに置かれていたセレナの手をぎゅっと握った。