寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 二歳違いの姉妹ということもあり、子供の頃は一緒に遊ぶ事も多かったセレナとクラリーチェ。
 生まれつき病弱で、部屋に閉じこもりがちなクラリーチェと、両親である国王と王妃、侍女や警護の者たちの目を盗んでは庭や城下で走り回っていたセレナ。
 あまりにも活発な彼女を見る人は誰もが「王子ならよかったのに」と口にしていた。
 乗馬や槍の訓練に興味を示し、騎士たちに交じっては馬に乗ろうと頑張る姿は子供の頃はかわいいだけで済んだのだが。
 成長するにつれ、興味を失うどころかさらに真剣に取り組むようになり、誰よりも早起きして厩舎で馬の世話に精を出し、鞍をつける速さもかなりのものとなった。
 周辺国にいい馬がいると聞けば、国王が渋る中、騎士を数人引き連れて見に行き、時にはひとりで決断し買い付けた。
 今でも暴れ馬や早馬をあっさりと乗りこなしては、周囲を驚かせている。
 そんな活発なセレナを、国王夫妻もはじめのうちは注意し、おとなしくするよう言っていたが、たびたび床に臥せるクラリーチェに気を取られるうちに、セレナの事は離宮のアメリアに任せっぱなしになった。
 そうなれば、セレナはいっそう興味のある事に時間を費やすようになり、騎士たちに交じって体を動かす以外にも、アメリアからたくさんの事を学んだ。
 料理や刺繍、裁縫に編み物。
 特に刺繍の腕前はかなりのもので、今では市で並べればすぐに売れ、商人たちの間でもぜひとも扱いたいとオーダーされるほどだ。
 料理上手なアメリアに教えられた料理の腕前も評判で、離宮の専属料理人が腰を痛めた時には代わりに台所に立って三十人分の夕食を作り上げた事もある。
 セレナがそうやってたくさんの経験をし、充実した日々を送ってきた一方で、クラリーチェの世界はほぼ城の中だけだった。
 それもほとんどは自分の部屋の中だけ。
< 82 / 284 >

この作品をシェア

pagetop