寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 セレナが部屋に戻ってしばらくした後、テオとカルロは国王への挨拶を済ませてミノワスターに戻った。
 近々王配となるテオは、時間を見つけてはランナケルドを訪れ、国民たちとの関係を深めている。
 クラリーチェに代わり、そのほとんどにセレナが同行している。
 農民と農作業に励んだり、川の護岸工事を進める技術者に交じって土砂を運び入れたり。
 軽やかな物腰と誰に対しても変わらぬ人当たりで国民たちの間にすっと溶け込み、テオがランナケルドを歩く姿は自然なものとなっている。
 すれ違う誰もが笑顔とともにテオを呼び止める。

『テオ王子、こんにちは。今日も男前だね』

『テオ王子、今日のお昼はうちの店で食べていってよ』

『テオ王子、新鮮な野菜がたくさん採れたから、ミノワスターの子供たちに持って帰ってください』

 誰もがテオを慕い、彼が王配となる事になんの不安も抱いていない。
 クラリーチェとともに、テオの人柄そのものの明るい国へと導いてくれるだろうと安心しているのだ。
 残念なのは、テオが王配として采配を振るう姿を見られないという事だ。
 ミノワスターの王太子妃となることへの不安も大きいが、それ以上にテオとこれまで通り気楽に会えなくなる寂しさの方が大きい。
 父と母と夕食をともにした後、愛馬たちの様子を見に厩舎へ行くと、そんなセレナの気持ちを知っているかのように、ベスが小さくいなないた。
 テオが誕生日に贈ってくれた仔馬は今では立派に成長し、セレナのよき相棒となっている。
 銀色に近いグレーの毛並みを撫でながら、セレナはベスの腹に頬を寄せた。
 市から帰った後で誰かに体を洗ってもらったのか、毛並みは滑らかだ。
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