寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 そんなセレナの姿に、父である国王はいい顔を見せなかったが、国王としての仕事と、病弱なクラリーチェの心配をするだけで精一杯で、セレナの行動に口を出すことはなかった。
 セレナに興味がないわけではないが、所詮お姫様の気まぐれだろうと甘く考えていたのだ。
 その考えは長い間変わらず、クラリーチェとセレナの結婚が現実味を帯び、具体的に動き出そうとしている今も、セレナの努力は国王に伝わっていない。
 セレナがどれほどの犠牲をはらい、努力を重ねても、国王夫妻には��かわいい末っ子のお遊び�≠ニしか受け止めてもらえないのだ。
 つまり、セレナが望む未来が実現することはないのだ。
 ランナケルドの次期女王はクラリーチェであり、クラリーチェの夫となるのは、テオであることが、変わることはない。
 セレナはベスに体を預けたまま浅い呼吸を繰り返し、昂ぶった心を落ち着ける。

「わかってるつもりでいたのに、私、まだ諦めてなかったみたい。……バカだな」

 セレナは自分に言い聞かせるように弱々しい声で呟いた。
 どうあがいても、セレナはクラリーチェの代わりにはなれないと、わかっていたのに、目を逸らしていた。
 カルロがクラリーチェを愛しげに見つめる様子をそっとうかがっていたテオ。
 彼の心もまた、クラリーチェに向けられている。
 そして、カルロとクラリーチェが愛し合っている事にも気づいているはずだ。
 セレナにも強い視線を向けていたが、それはセレナへの同情によるものだろう。

「ベス、お願いだから、長生きしてね。私をひとりぼっちにしないで」

 セレナはベスの体を優しく撫でた。
 ベスは鼻先でクラリーチェの頬を撫で、優しく穏やかな目で彼女を見つめた。
 まるで吸い込まれそうにキレイな瞳に、セレナはほおっとため息を吐いた。

「ふふ。照れちゃうから、あまり見つめないで。……ミノワスターにいた頃はテオ王子とも、こうやって仲良くしていたの?」


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