寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
ミノワスターで生まれたベスを、テオは愛情をこめて育てたと聞いている。
世話もすべてテオが行い、どこに行くのも一緒だったらしい。
その後、セレナが乗馬を楽しんでいるという噂を聞いたテオが、何故か誕生日のお祝いにと、セレナに譲ってくれたのだ。
テオが何よりも大切にし、愛情の集大成ともいうべきベスをあっさりと手放したことはミノワスター国内の大きな話題となった。
その理由を聞かれたテオは、「未来のミノワスターの王妃へのプレゼントとして、大切にしているものを贈るのは当然だ」とあっさりと答えていた。
将来セレナと結婚する事が決まっているカルロならまだしも、テオがその言葉を口にしたことはさらに大きな話題となった。
とはいえ、明るく飄々とし、つかみどころのないテオの言葉に深い意味はないだろうと誰もが納得し、その事はすぐに忘れ去られた。
けれど、ただひとり、セレナだけは、どうしてもテオの言葉が忘れられなかった。
自分の愛馬を贈る事になんの意味もないとは思えなかったのだ。
そして、いつかテオの妃になりたいと願うセレナをいっそうその気にさせてしまった。
結局セレナのその想いは、子供が考えそうな、安易な夢でしかなかったが。
どれほど病弱で女王としての資質に不安があろうとも、クラリーチェがその座に就く事は決定事項なのだと思い知らされ、そして追い討ちをかけるようにテオの気持ちはクラリーチェのものだと気づかされて、セレナの心は激しく傷ついた。
そして、どれだけ努力を重ねても、夢は夢のまま叶うことはないのだと、実感した。