寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
暖かな日差しがランナケルドに春を告げる頃になっても、クラリーチェの体調は思わしくなかった。
例年よりも厳しい寒さが続いたせいだろうという医者の言葉を聞きながら、国王夫妻は顔を歪めた。
そして、ここ一週間、食が細く好き嫌いが多いクラリーチェのためにと、離宮からアメリアを呼び寄せ、三度の食事を作らせている。
料理上手なアメリアが作る食事なら、クラリーチェの食も多少進むのだ。
今朝は野菜と魚をスパイスで味付けし、蒸し器で調理したものをアメリアは用意したが、彼女の傍らにはエプロンを身に着けたセレナも立っていた。
離宮にいる時にはこうしてふたりで料理をするのだが、国王がセレナが使用人とともに台所に立つことをよく思わないせいで、王城でその機会はほとんどない。
アメリアもその事は知っているが、セレナと過ごせる時間を無駄にしたくないと、朝早くから一緒に料理を作っているのだ。
王宮専属の調理人たちと侍女たちが朝の支度をしている傍らで、セレナは焼きあがったパンを皿に並べていた。
「お姉様はアメリアのパンが大好きだから、たくさん食べてくれると思うんだけど」
期待を込めた声でセレナはそう言った。
なかなか体調が回復しないのはきっと、食べる量が少ないせいだろう。
一日部屋に閉じこもっているクラリーチェは、用意された食事も半分食べればいいほうで、ほとんど手をつけない日もある。
心配した国王夫妻が何度も様子を見に行くが、頭痛やめまいで寝込んでいることも多く、王宮内の誰もがその容体を気にかけている。
もちろんセレナも心配し、ほんの短い時間だが、毎日クラリーチェの部屋を訪ねている。