寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「さ、運びますよ。セレナ様と私の朝食も運んで一緒に食べましょう」
準備を終えたアメリアが、料理を載せたワゴンを押しながらセレナの背中をポンと叩いた。
「セレナ様が心配する必要はないんですよ。時期がくれば、クラリーチェ様もお部屋を出て元気な顔を見せてくれます」
明るい声で笑うアメリアに、セレナはどこからそんな自信が生まれるのだろうかと首をかしげた。
「スープが冷めないうちに、行きますよ」
訝しがるセレナに構わず、アメリアはさっさと調理場を出ていく。
セレナはカウンターに準備していたフルーツが入ったかごを手に取り、アメリアに続いた。
「クラリーチェ様、おはようございます。朝食ができましたよ」
アメリアはクラリーチェの部屋のドアを叩くと同時に中に入り、勢いよくワゴンを運び入れた。
セレナが続くと、部屋の奥から侍女のリリーが慌てた様子で出てきた。
リリーはアメリアに気づくと、ホッとしたように足を止めた。
「なんだアメリアさんか、よかった……え、セレナ様っ。今朝は騎士たちと遠乗りじゃ……」
ホッとしたのも束の間、アメリアの後ろにいるセレナに気づいたリリーは、目を見開き再び焦り始めた。
「おはよう、リリー。遠乗りは明日に変更になったのよ。それより、お姉様、おはようございます」
「あの、セレナ様、ちょ、ちょっとお待ちください」
リリーはセレナの前に立つと、両手を伸ばしてセレナの動きを止めた。
「……あの、リリー?」
リリーに止められたセレナは、さっさと奥の部屋に向かうアメリアの背を追いかけようとするが、リリーはそうはさせまいとセレナの行く手を遮った。
「もうしばらく、お待ちいただけますか?」
クラリーチェのベッドが置かれている部屋をちらりと見ながら、リリーは大声を上げた。
「く、クラリーチェ様—、セレナ様がお見えになったので、今からお通ししますね」
リリーの声はかなり大きく、部屋中に響いた。