寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「ベッドはまだ温かいから、いなくなってそれほど立ってないわよね。体調が悪いのに、どこに行ったのかしら」

 この部屋から出る事もなく、ベッドで休んでいる事の多いクラリーチェには、外出する体力があるとも思えない。
 クラリーチェ自身、部屋でのんびりと過ごしているほうが気楽だと言って、滅多に自分から部屋を出ようとしない。

「もしかして、連れ出された……え、誘拐?」

 不審に思ったセレナは、誰かがこの部屋に侵入し、連れ去ったのではないかと考えた。

「大変。早く探さなきゃ」

 セレナは、なにか手がかりはないかと部屋の中を見回した。
 しかし、普段通りの明るい室内には変わった様子はなく、クラリーチェが気に入っているセレナ手作りのクッションも整然とソファに並んでいる。
 それに、綺麗好きなクラリーチェの部屋らしく、部屋中どこを見ても整理されていてホコリひとつ見当たらない。
 読みかけだろう本も、ベッドの横のサイドテーブルに置かれていて、ページの間から見えている栞は、以前セレナが作ってプレゼントしたものだ。
 その本も、テーブルの角と本の角を合わせて置いている徹底ぶり。

『長い時間を過ごす部屋だから、綺麗にしておきたいの』

と口癖のように言っているクラリーチェを思い出しながら再び部屋中を見回せば、部屋の入口に立つリリーと、なにも気にせず食事の準備を始めているアメリアがいた。

「アメリア、お姉様がいないわよ、いったい何があったの?」

 あたふたとしながら部屋中をうろうろするセレナに、アメリアは苦笑しながら声をかけた。

「落ち着いてください。クラリーチェ様でしたら、きっとお庭にいらっしゃいますよ」
「え、お庭?」

 アメリアの言葉に、セレナは庭に続く扉を見た。
 普段はカーテンで隠されているが、何故か今はカーテンが開いていた。
 近づいて見れば、扉もほんの少し開いていて、誰かが出入りしたとわかる。

「お姉様がお庭にいるってどういうことなの?」

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