寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
ドアを開け、外に出ると、目の前には奥の庭園に通じる石畳があり、芽吹いた緑と花の香りに満たされていた。
城の南端にあるこの庭は、クラリーチェの部屋に接していて、出入りもクラリーチェの部屋からしかできない。
おまけに外部からの侵入を防ぐために庭の周囲は高い塀で囲まれている。
クラリーチェのために作られた庭であり、季節ごとにキレイな花が咲きほこる花壇や、東屋などもあり、信頼のおける庭師のみが手入れを行っている。
セレナがクラリーチェの姿を求めてあたりを見回せば、歌声が聞こえてきた。
「この歌……」
次第に近くなる歌声はクラリーチェのもので、か細いながらも綺麗な声で歌っている。
子供の頃はふたりで庭の芝生に腰を下ろしてよく歌っていた。
それはクラリーチェにとっての、数少ない外遊びの時間であり、当時は体が弱いとはいえ、今よりもっと外に出ていた。
体に負担がかからない程度に、と父と母から厳しく言われていたが、時にはクラリーチェとセレナふたりで疲れ切るまで走り回り、バラ園の中にある東屋で寝てしまった事もある。
そのせいでクラリーチェが体調を崩してしまい、セレナが叱られることもあったが、今よりもクラリーチェは元気だった。
たとえ体調を崩しても、一日体を休めれば回復し、セレナと本を読んだり王宮内を探検することもあった。
クラリーチェに変化があったのは、テオとの婚約が発表されてからだ。
未来の王配殿下が決まったとなれば、国の行事にともに出席する機会も増えるが、クラリーチェはその頃から今まで、体調不良を理由にそのほとんどを欠席している。
それだけでなく、セレナと過ごす時間も減り、自分の部屋で過ごす事が増えた。
セレナは当時、クラリーチェはテオが気に入らなくて、拗ねているのかと思っていた。