寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
しかし、定期的にランナケルドを訪ねてくるテオと会えばクラリーチェは楽しそうで、ふたりでひそひそと話したり、くすくすと笑い合っていた。
その仲睦まじい様子は国王夫妻を喜ばせるには十分で、ランナケルドの将来は明るいと誰もが思った。
ただ、クラリーチェの体調はその頃から格段に悪くなり、自室で体を休める日が続いている。
セレナは久しぶりにクラリーチェの歌声を耳にし、胸がいっぱいになる。
そして、離宮の周辺に咲き乱れる花で花冠を作ったり、アメリアと一緒にパンケーキを焼いていた幸せな風景が一気によみがえってきた。
婚約する前の楽しい子供時代を次々と思い出し、目の奥も熱くなる。
「お姉様……」
セレナが声のする方へ小走りで向かった時、石畳が続く道の向こう側の茂みがカサカサと音を立てたかと思うと、スキップをしながら歌を歌っているクラリーチェが現れた。
「え、セレナ? どうして」
クラリーチェはセレナの姿を見た途端、慌ててスキップをやめて呆然と立ち尽くした。
あまりにも驚いたせいか、口をパクパクするだけで何も言えずにいる。
「お姉様、あの、体調は……大丈夫なの?」
セレナはクラリーチェに駆け寄り、顔色は悪くないかと彼女の顔をじっと見つめる。
「だ、大丈夫よ。……えっと、今朝は気分が良くて、天気もいいから久しぶりに。そう、久しぶりに庭を散歩したのよ」
クラリーチェはセレナから目を逸らし、言い訳をするようにそう言った。
その顔はほんのり赤みを帯び、つやつやしている。