風の旋律
義父が資産家であることを知ってから、僕はピアノから逃げるために“跡を継ぐ”と申し出た。
でもそれも、色んな理屈並べられて却下された。
わざわざ家に来るピアノレッスンの講師の香水も大嫌いで、もうすべてが嫌になった。
で、ついに講師にも義父母にもキレちゃって、施設に舞い戻ったわけ。
でも、施設の記憶があるわけじゃない僕は、施設に戻ったところで心休まるわけじゃなかったし、
その頃の僕は完全に他人への信頼をなくしてた。
全部に対して否定的で、ひねくれてたと思うよ。
“誰と暮したところで、僕にはお母さんもお父さんもいないんだ”
って、冷めた目で施設の人たちを見てた。
でも、そんな僕にも施設のみんなは優しくしてくれた。
ひねくれものの僕を、温かく包んでくれたんだ。