東の空の金星
大和さんへの取り調べはかなり続いたが、(なぜやもめなのかとか、仕事の内容だとか、年収とか、ご両親の仕事とか、家のローンはどれぐらい残っているのかとか、ブランドモノのダイヤの値段まで…。)
大和さんはオトナの対応で、どんな失礼な質問にも、笑顔でやんわり返事をしていたけれど…

最後は母が「いずみは言い出したら聞かないからねえ。」と言って許された感じだ。

ま、ここまでの取り調べが面白がった興味本意なだけだっていうことがわかる。



大和さんは大きく息をつき、

「これからも、よろしくお願いします。」

と深く頭を下げ、私を連れて車に乗り込んだ。


帰り道。

「賑やかな、ご家族だねえ、毎日楽しそうだ。」

と本日の営業を終えた私の知っている穏やかな笑顔を見せたけど、
きっと疲れたに違いない。
特に姪の中学生は
都会のスーツを着こなすオトナの男に興奮しっぱなしでだったかな。

「すみません。疲れたでしょう。」と言ってみると、

「シマはこういう楽しい家族がいいんでしょう?俺も、慣れないと。」
とクスンと笑って楽しそうにFMから流れる音楽に合わせて歌を口ずさんむ。

私も知っていた曲で一緒に口ずさむと、

「一緒に歌える歌もあるんだな。」と笑う。

「これからは沢山増えますよ。」

「楽しみにしよう。」

とまた微笑み、高速を走って帰っていく。

同じ家に住んで、同じベッドで眠り、
同じ歌を口ずさむ。

私達はこれからどんどん家族になっていく。

そう思うと、嬉しくて、

愛しくて、

「大和さん。好きです。」と言うと、

「シマ、俺も好きだよ。ものすごく。」と前を見たまま、私の手をそっと握る。

「ちゃんと運転して下さい。」

「はいはい。」と笑ってハンドルを両手で握った。
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