伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

ノックを二回。すると「誰だい?」と声がする。この聞き方をするときは人間のときのオーガストだ。
猫の時は足音で判別がつくらしく、「ドロシアかい?」と聞かれる。


「ドロシアです。お仕事中ですか? 入ってもかまいません?」

「いいよ。おいで。……休憩しようか」


後に続く言葉は、室内にいるデイモンに向けて言われたものらしい。
ドロシアが扉を開けると、デイモンが書類を手にソファの背もたれに背を預けるところだった。


「ごめんなさい。お邪魔しました?」

「とんでもない。私は出ていましょうか。奥様とのお話が終わったらお呼びください」


デイモンは書類を抱えて颯爽と出ていった。残っているのはソファに腰かけたまま、長い脚を持て余しているオーガストだ。


「おいで」

いつものように手を広げられ、ドロシアはおとなしく彼の隣に腰を落ち着ける。……と、脇に手を差し込まれ持ち上げられ、彼の膝に乗せられた。


「オーガスト様?」

「休憩するって言っただろ」


人形遊びでもするように、ドロシアを膝に乗せたまま髪をすく。
オーガストはドロシアを甘やかすのが好きなのだ。


「あの、父からの手紙が来たんです」

「ああ。さっきデイモンが言っていたな。義父上はお元気かい?」

「ええ。少しずつ上向きになっているようで、来年には議員職にも復職できるとか」

「それは良かった。もともと才能の無い方ではないし、運が向いてくればきっと成功するだろう」

「で、今年の国王様の誕生祭なんですが、オーガスト様は出席しますか? 行くなら私も一緒に連れて行ってほしいんですけど」
< 113 / 206 >

この作品をシェア

pagetop