伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「誕生祭? ……ああ、そんな時期だな。今年は婚姻証明書を出した年だから、君を連れていけるのなら一番いい。……ただ」

「猫化が心配ですか?」

「……うん。君と一緒にいるようになってからちょっとは落ち着いているとはいえ、今回の生はどちらかというと人間よりも猫寄りだからなぁ」


オーガストの猫化は、一日に一度では利かない。
けれどこれほど頻繁なのは、四度目の生である今回が初めてなのだという。

最初の生の時は数週間から一ヵ月程度に一度くらいの、ごまかしようのある頻度だったそうだ。(それでも奥方には結局ばれて、結婚生活は破綻したらしい)

二度目の生は、二週間に一度程度。三度目の生は一週間に数回。生を重ねるごとにその期間は短くなり、今回は最低でも一日一回だ。

人間の体と猫の体、どちらが本当なのか分からないが、今では猫のほうが本体なのではないかと思えるほどだとオーガストは言う。


つられて黙ってしまったドロシアの目尻に、温かいものが触れる。オーガストのキスだ。


「ごめん。本当は……里帰りだってしたいだろうに」

「いいえ。大丈夫、わかっています」


一度、孤児院の様子を見に行ったり、父や弟の顔をみたりしてきたい、と里帰りを求めたことがある。けれど、デイモンによって強く反対されたのだ。


『秘密を知ったものを、かんたんに領地の外には出せないのです。ドロシア様を疑っているわけではありませんが……』


ドロシアは、今やオーガストのことを心より愛している。
彼に不利になるようなことをするはずはないのだが、子ができない以上、デイモンにとってはまだまだ信用ならない存在であるらしい。

手紙を出すことは許されたが、それだってデイモンによるチェックがされている。
< 114 / 206 >

この作品をシェア

pagetop