伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
目をそらしながら言ったドロシアに、ビアンカは挑戦的なまなざしを向けた。
「あらそう。……残念。だったらやっぱり私がどうにかしなきゃいけないのかしら」
「……え?」
「なにか弱みを見つけないといけないわね。知ってる? ノーベリ―伯爵が支援した事業は必ずうまく行くっていうジンクスがあるの。父はそれを妄信している。この件を片付けないと、私には自由がないのよ。……ここまで頼んで頷いてくれないんだからいいのよね? あなたの旦那様を私が誘惑しても」
自分が言い寄れば、落ちない男などいないとばかりに、ビアンカは魅惑的に笑う。
ドロシアが見ても、その挑戦的な笑顔にドキッとしてしまう。艶のある唇。長いまつげから覗く、黒曜石のような瞳。全体的に官能的な雰囲気を立ち込めた彼女は、妖しいばかりに色気がある。
「人の夫に手を出すのは犯罪です」
「私から出せばね。……だけどあちらから手を出したのなら、やむを得ず……でしょう?」
「オーガスト様は私を裏切ったりはしません」
「そうかしら。こんな赤毛でそばかすのお方に、私が負けるなんて思えな……」
突然、ドロシアは腕を引っ張られた。
「え……」と言葉を話す間もなく、大きな腕に抱きしめられる。
それは嗅ぎなれた夫の香りだった。
「オーガスト様?」
「失礼、ビアンカ嬢。そろそろ妻を開放してもらえますか?」
「あら。オーガスト様、いつの間に」
ビアンカは慌てて取り繕うように咳をした。