伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


「……たしかにオーガスト様と出会えたことは私にはこの上ない幸運だったわ。でも別に、この結婚は私の父が売り込んだものではないわ。それに、オーガスト様も私をちゃんと愛してくれている。あなたが思っているような、打算的な関係ではないの」

「へぇ? 打算的ではないのにあんなに年上の方に嫁ぐかしら。いくら政略結婚と言っても、普通は年齢は合わせるものよ。あなたに打算がなかっただけで、メルヴィル男爵にはあったに違いないわ」


ドロシアは口ごもる。全く打算がなかったとは言えないだろう。それはメルヴィル男爵家にとっても、ノーベリー伯爵家にとってもだ。


「実際、あなたのお父様の事業も、助けてもらっているのでしょう。どんなに綺麗ごとを言っても、やっていることは同じじゃないの。ねぇ、とにかく、私の願いはたった一つ。お父様の事業を伯爵様に支援してもらって、このばかばかしい結婚騒ぎから解放されたいだけなの。私の頼みを聞いてくれたなら、この宝石をあなたにあげるわ。とても綺麗でしょう? 今着ていらっしゃるドレスにも合うわ。それに、私が愛用しているクリームもあげる。そのそばかすが治るかもしれなくてよ」

「宝石なんていらないわ」


ドロシアは頬を手で隠しながら言う。
赤毛とそばかすはドロシアの長年のコンプレックスだ。オーガストのおかげで最近は気にならなくなっていたが、こんな美しい令嬢から言われれば、潜んでいた劣等感も顔を出す。


「……とにかく、私は仕事の話に口を出せないの。マクドネル子爵の事業に価値を見出せば、オーガスト様だって無下にはなさらないわ。ここで私たちが話したって仕方ないことよ」
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