伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「子ができなかったのはおそらく僕のせいだ。猫の命が混ざった僕は、きっと普通の人間にはなり得ないんだよ。だから、最初の生の時に娶った妻との間にも子はできなかった」
オーガストが目を伏せた。そのタイミングで、扉が開いたかと思うとデイモンが入ってくる。
オーガストはデイモンをちらりと見つめ、項垂れるように肩を落とした。
「最初からの約束だったんだ。妻をもらって、もし子ができなければ、この土地を守るためにどんなことでもすると」
「……誰とですか」
「デイモンや、屋敷のみんなとだ。だから僕は、愛など信じていない、打算な考えにも頷いてくれるような娘を嫁にもらうつもりだった」
嫌な予感に冷や汗が出てきた。
一番最初にオーガストが頑なにドロシアを帰そうとしたことが思い出されて、胸がもやもやとする。
「でも僕は、君に出会って。……恋をしてしまったんだ。君との子供が欲しかった。君とよく似たかわいい子をこの腕に抱きたかった。だけど……」
ドロシアは唇をかみしめる。続く言葉が、いい言葉だとはとても思えなかったからだ。
「もう、無理だ。僕は猫から戻れない。だから最初にしてしまった約束を、守らなきゃならないんだ」
うつむいたオーガストの足元に、ぽつりと滴が落ちる。
泣いているのか、と手を伸ばしたところで、デイモンが後を引き継いだ。