伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「……ここからは私がお話しましょう。ドロシア様、オーガスト様が最後の生を迎え、妻を迎えようと思ったのは、すべてこの屋敷をいつまでも残すために他なりません」

「それは、……知っているわ」


何度も何度も、いろいろな人から言われた。
魔女達を守る、小さな要塞。それがこの屋敷なのだと。


「でもオーガスト様には子ができない可能性があった。過去の結婚で、できなかったという事実がありましたからね。それで私が進言したのです。もし、迎えた奥方と一年過ごして子ができなかった場合、奥方には別の男と子を作ってもらいましょうと。縁談の話をまとめるときにすでに決められていた約束なのです」

「……え?」


ドロシアは眉を寄せ、一歩後ずさる。
オーガストは固く目を瞑って首を垂れ、デイモンは痛々しい表情をしながらも決然と言い放つ。


「国王様に婚姻届けを出し、お言葉を授かったあなたに子ができれば、余程のことがない限りオーガスト様の子供だと認定されます。……お分かりですね。本当にオーガスト様の子でなくとも、構わないんです。……数日前、地下室でお話しようと思ったのはこの話です。……後生です。どうか、チェスターとの間に子を作ってください」

「な……どうして」


何故突然チェスターの名が出たのか、ドロシアにはさっぱり分からなかった。
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