伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
やがて、バタバタと廊下を走る音が響き、息を切らせてやって来たのは、デイモンとクラリスだ。
「お待たせしました」
クラリスも興奮しているのか、いつもの冷静な様子ではなく、少しばかり頬を赤く染めている。
「ドロシア様、話は聞きました」
「クラリス、まず教えて。私の理論があっているのか。猫の魂と分離させたことで、彼が死んでしまうんでは困るのよ」
「融合させた状態で何度か生まれ変わっていますから濃密な絡みつきだとは思いますが、理論上は可能だと思います。それには、当時の状況も教えていただかないと。オーガスト様、私とアールの通訳になっていただけますか?」
「ああ」
「なんとしてでもやってみます。……ドロシア様、ありがとうございます……!」
クラリスが感極まったように頭を下げる。
「お礼は本当にうまく行ってからでいいわ。それより、クラリスにしかできないことなんだもの。どうかお願い。オーガスト様を生かして」
「もちろんです」
ドロシアはクラリスの手を取り、願いを込めてぎゅっと握った。
彼女もそれに応え、顔を上げてからは真剣な表情で、オーガストとアールに向きなおる。
ここからは魔女たちの仕事だ。
自分の出番が終わったことを悟って、ドロシアは息をついて一歩下がった。
と、足が包帯巻きになっているのでよろけてしまった。しかし、ドロシアが床に膝をつくことはなかった。腕をつかんで支えてくれたのは、デイモンだ。