伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

ベッドに入ってからもなかなか寝付けない。
寝返りをしながら、今日一日を思い返すと明らかにオーガストよりもチェスターやエフィーと話しているほうが長い。


「やっぱり私、好かれてないのかしら。……帰ったほうがいいの?」


不安で涙が出そうになる。
ふっくらした枕を抱え込んで、涙を堪えながら眠りについた。





ドアのきしむ音がする。

(……誰?)

ドロシアは眠りの沼にどっぷりとつかっていたが、物音に意識だけがふわりと上昇した。


「みゃおん」


猫の声だ。よく部屋に来る白猫だろうか。それとも朝に見た黒猫?

起き上がって確認したかったが、どうにも体が動かない。
昨日もそうだったが、この屋敷は寝心地はいいのか夜の眠りが深くなってしまうようだ。

この時も、猫の存在が気になり薄目を開けてはみたものの、すぐ眠りの淵に落ちそうになる。


(……黒っぽい? 白猫ちゃんじゃないみたい)


猫はベッドのふくらみを見て、足音を立てずに一直線に向かってくる。
猫は軽い身のこなしで、ベッドの上へジャンプした。


(あれ、茶色?)


間近で猫の姿を見て、月明かりに照らされたその毛の色を確認する。


(この猫、この色、昔出会った――)


思い出の猫に似ていると思ったら一気に意識が覚醒する。
しかし、ドロシアは起き上がれなかった。まるで金縛りにでもあったように不思議と体が動かない。


「う……ん」


声もはっきりとは出ず、もどかしく感じる。けれどそれで逆に、猫はドロシアが寝ているものだと思ったのかもしれない。
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