伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

代わりに、猫はたくさんいた。ドロシアの傍にまで来るのは、あの白猫だけだが(しかし、抱っこしようとすると逃げていく)庭先で何匹もの猫が集まって集会のようなことをしているのをみた。


(なんにせよ、仕事はたくさんありそうでいいわ。それにしても、……こうオーガスト様と話す機会がないとは思わなかったわ。これじゃあ三日間ここにいても彼のことなど分からないじゃないの)


結局、最後にオーガストを見たのはマクドネル子爵を追い返した時だけだ。
お盆を持ったまま二階に上がり、自室に入る前にオーガストの執務室をノックする。


「誰だい?」

「ドロシアです。あの、……もしよかったら一緒にお話でも……」

「ああ、すまない。悪いが今日はだめなんだ。部屋でゆっくりお休み」

「そうですか」


扉を開けてさえくれなかった。ドロシアはがっかりして自室に戻る。

湯気の立った食事を、ひとつひとつ口に入れて咀嚼する。おいしいのだろうが味がしない。彩りの考えられた食事は、厨房で見た時はなんて美味しそうなんだと思ったのに、ひとりの部屋ではそれも色あせて見えた。

食べ終わったころ、お茶を持ってやってきたのは、チェスターだ。


「あら? エフィーは?」

「彼女は今忙しくて、私が代わりに。ドロシア様、湯の用意もできております。おひとりで大丈夫ですよね?」

「ええ。場所さえ教えていただければ」

「でしたらご案内します。終えたらまっすぐ寝室に戻ってそのままお休みください。オーガスト様へのご挨拶もいりません」

「でも、……少しはオーガスト様と話をしたいのだけど」

「明日になればできます。今日はゆっくりお休みください」

「そう」


オーガストとのことを応援してくれてそうなチェスターにまでそう言われて、ドロシアは頷くしかなかった。
仕方なくお茶を飲み終えた後の片づけはチェスターに任せ、早々に湯あみをし、自室へと下がる。
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