伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
仕方なくシーツを下半身に巻き付けたオーガストは、「ごめんごめん」と頭をかく。
「少し気になって昨晩君の様子を見に来たんだ。そしたらその、寝ちゃったみたいで」
「裸でですか?」
完全に変態を見る目でドロシアはオーガストを見上げる。
オーガストは困ったように頭をかきながら、「うん。いや、まあ」とごまかそうとする。
ドロシアはパニックだ。大人の男性の裸など見たことがないのだから。
「……私を妻にする気になったんですか?」
「いや、違うんだ、ドロシア」
「違うんだったらなぜ裸でベッドに入って来たんですか」
「引っ張り込んだのは君なんだけどなぁ」
ぽそりと言ったオーガストは、ふっと黙るとドロシアの右手に左手を重ねてそっと見つめた。
赤みがかった茶色の瞳に見つめられて、ドロシアは既視感を覚えた。
この瞳に見つめられたことがある。遠い昔、もう少し赤いとび色の瞳に。
「……猫」
「えっ」
オーガストがびくりと体を震わす。
「オーガスト様、ここには茶色の猫はいませんか?」
「猫はたくさんいるよ? 茶色もそりゃいくらでも」
「オーガスト様に瞳の色に似た猫です」
(そうだ、昨日よ。夜中に猫が来た。あの子がいると楽になって、そのまま抱きしめて眠ったような)
「……あの、ドロシア。僕、服を着たいんだけど」
彼の目に見入ってしまったドロシアは、ついつい顔を近づけてしまっていた。あまりに近い距離に驚いてぱっと体を離す。