伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
その時、扉が開く音がした。
我に返ってふたりで音のほうを見ると、チェスターが出ていくところで、苦笑しながら「すみません。お邪魔かと思うのでしばらく出ていますね」と言った。
言われてみれば、先ほどからふたりの距離は近い。
チェスターの存在すら忘れていたくらいだ。
「あ、あは。じゃあ、チェスターやエフィーもなにか力があるんですか?」
「そうだね。エフィーは魔女の祖先で本人もそうだよ。使い魔が白猫のアンだ。チェスターも母親はそうだけど、男児だから力は受け継いでいない。他の使用人たちも女性は使い魔を持っている。残りの猫たちはさまざまだ。主人を失った使い魔もいるし、ただの猫もいる」
「じゃあアンと話せるのはエフィーだけなんですね?」
「いや? 僕は猫と同化したときから彼らと話せるよ。猫の命を持っているから、どの猫とも話せる」
「そうなんですか! じゃあ、オーガスト様はアンが何を言っているかわかるのね?」
ドロシアが身を乗り出したので、オーガストも嬉しそうに笑った。
「分かるよ」
「私、いつも気になっていたんです。ここにきてからずっと、アンが私に会いに来てくれたこと。アンは私になんて言っていたのかしら」
「アンは君のことが気に入っていたみたいだよ。僕に“弱虫”と言ったくらいだから」
「え?」
「君を帰すと言ったらね。文句を言いに僕の執務室にやって来たんだ。その後慌ててエフィーが連れ戻しに来たけどね」
「まあ」
ドロシアは口もとを押さえて笑った。
心がふわりと軽くなるようだ。
オーガストといると自分がすごく子供のような気がして、こんな風に無邪気に笑っていることに罪悪感を感じない。