伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「意外でしたか?」
「犬に立ち向かっていくような令嬢がいると思っていなかったものでね」
皮肉めいた声に頬を膨らますと、オーガストは声を上げて笑った。
「……本当は嬉しいよ。可愛くて勇敢な少女が、こんなに大きく、素敵な女性になっていたなんて。歳は取るものだな」
ほほを撫で、オーガストは優しく額に口づける。
「オーガスト様、おじい様みたい」
「年齢で言ったら君のおじいさまよりずっと上だからね」
そう言われればそうだ。
先ほどから、可愛いとか素敵だとかいう聞きなれない言葉にうっとりとしていたが、よくよく考えれば、これは祖父が孫を愛でるのとそう変わらないのではないだろうか。
ドロシアは若干複雑な気持ちになる。
「で、どうだい。今の話を聞いても、君は僕が怖くない?」
本当は百十七歳で、猫化の呪いがかかっている。
それを受け入れられるかと言われれば、よくは分からない。
けれど、ドロシアはオーガストを怖いとは思えなかった。
「怖くはありません。というか、正直に言えばちゃんとは理解できていないのかもしれません。だって私が知っているオーガスト様は、三十七歳で、時々猫に変身するけど、私には優しい方ですもの。そしてそのあなたを、今私は好きだと思っています」
思った通りを言えば、頭をガシガシと撫でられた。押さえながら顔を上げると、オーガストは泣きそうになっている。
「君は……本当にいい子だなぁ」
(オーガスト様も……三十七歳……いや百十七歳だっけ、とは思えないくらいかわいいなぁ)
頭を撫でる行為は、ドロシアを子ども(もしかしたら孫かもしれない)みたいに思っての行動なのかもしれないけれど、ドロシアはそれでもいいと思った。撫でられるたびに、彼が自分のことを大切に思ってくれているような気がするから。