王様と私のただならぬ関係
 



 社食は混んでいたが、明日香たちは、なんとか秀人たちと一緒に座れた。

 そのうち、真美が美味しい中華料理の店の話を始めると、大地が明日香に向かって、言い出した。

「そういえば、お前、昔、角煮で歯を折ったことがあったな」

「……あ、ありましたね」

「角煮で?」
と秋成が訊き返す。

「大学の下に中華料理店があって、みんなでよく行ってたんですよ。
 安くて、ボリュームがあったので」
と明日香がみんなに説明する。

「角煮って、普通、トロトロじゃない?」
と言ったあとで、秋成は感心したように言ってきた。

「明日香ちゃんの手は魔法の手だねえ。
 どんなものも石に変える魔法を持っている」

「それ、いい話なんですか……?」
と社食の甘いんだか辛いんだかわからない万民受けするカレーを食べながら明日香は言った。
< 200 / 298 >

この作品をシェア

pagetop