王様と私のただならぬ関係




 不思議だなーと明日香は思っていた。

 いつもなら、もうお風呂に入って、化粧を落としていたら、出かけるのはめんどくさいと思ってしまうのに。

 今日は全然めんどくさくなかったな、ともうずいぶん慣れた気がする秀人の車の助手席で思っていると、
「なにが食べたい?」
と秀人が訊いてきた。

「あっ。
 今日は、私がおごりますねっ。

 金魚と水槽のお礼にっ」
と言ったが固辞される。

「いえいえ、ぜひ、わたくしがっ」
とまるでレジで伝票を奪い合うおばちゃんのように明日香が言うと、

「じゃあ」
と秀人は、低価格で有名なファミレスへと車を乗り入れた。

「いやあの、子どもじゃないんですから。
 大丈夫ですよ、普通の店でも」
と言ったのだが、

「いや、大丈夫だ。
 此処でも食べたことはある」
と店を見上げて言う。

 いや、食べたことはあるって……。
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