王様と私のただならぬ関係
 



「じゃあ、また、明日」

 明日香のマンションの下でそう言うと、
「はい。
 ありがとうございました」
と明日香は頭を下げたあとで、

「あの、上がってお茶でも飲んでいかれませんか?
 明日香も元気に泳いでますし」

 見ていかれませんか?
と言ってきた。

「いや、今日はもう失礼するよ」

 一からやり直すと決めたのだから、迂闊に手を出したりしたくない。

 今日の明日香は楽しそうで可愛かった。

 今、部屋には上がらない方がいい気がする、と思って、そう言った。

「そうですか」
と明日香は俯きがちに小さく言った。

 残念です、という感じだったが、もう一度、誘ってはくれなかった。

「早く入れ。
 部屋の灯りが着くまで見てるから」
と言うと、はい、と明日香は頷く。
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