お菓子の城
えらくオシャレをしていた。
年の割にスタイルがいいから、明るい色を好む傾向にあるが、その淡いピンクのジーンズはどうかと思う。
しかしチェックのジャケットとよく似合っている。
私は__ときたら、ベッドからそのまま抜け出したような格好だったが、もう時間がないから致し方ない。デートでもあるまいし、すぐに帰ってくるし。
片道1時間。
その拷問のような時間を思うと憂鬱だった。普段、会話らしい会話もないのに、一体なにを話せばいいのか?
若干、飛ばし気味に車を走らせる。
「ガソリン、入れろ」
「昨日、入れたからいい」
「そこで入れろ」
それは絶対だった。
この絶対を、私も母も嫌っていた。
同じように嫌い、隠れて笑い合い、秘密を分け合っていた母はもう、いない。
私はスタンドに車を寄せた。
なぜなら__父は絶対だからだ。