170回、好きだと言ったら。



その言葉にあたしは困ったような笑みを浮かべるしか出来なかった。


前に、杜禰リマさんこと―小鳥遊 鞠さんと出会った。あの日以来、一度も出会っていないけれど、彼は飛澤さんの率いる暴走族の副総長らしい。


雰囲気はちょっと独特だけど、見た目はどこにでもいそうな普通の男性。
しかしそうは言っても危なそうな空気はあったのだ。


だから小野瀬さんには悪いけれど、あたしは出会って欲しくないと思う。


「…沖宮さん、今朝わたしが片思いの人がいるか聞いたでしょ?
実はわたしは昔いたの。好きな人」

「え、そ、そうだったの??」


小野瀬さんは眉を下げて、お弁当を抱えながら「屋上行こうよ」と言う。
頷きながら話の続きを託せば、小野瀬さんは寂しそうに呟いた。


「一度だけ…、わたしが雨の日に傘を忘れちゃったことがあってね。
その時バイクに乗った男性が、屋根のある店の下で雨宿りをしていたの。

わたしもそこで雨宿りさせてもらっていたら不意に男性が振り返って、「傘、ないの?」って話しかけてくれて…。
それからぽつぽつ話してるうちに仲良くなって、結局名前も知らない間に別れてしまったけど、初恋だったなあ」

「そうだったんだ…。
バイクに乗ってたの? 雨の日に?」

「うん、びっくりだよね。雨の日にバイク乗るなんて危ないって分かっているはずなのに」


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