華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
力が入らなくなっていく足で、引きずられるようにして歩きながら叫ぶと、ラシュテさんはそう吐き捨てた。

この人、悪さをしてセイディーレに裁かれた人だったんだ。


「あいつは悪魔だ。俺が強盗に入ったのは家族のためだったのに、その事情なんてお構いなしに重罪にされた」


またしても耳にすることになった、悪魔という単語。憎々しそうに口にされた話を聞いて、ほんの一瞬恐怖や危機感が薄れた。

引っ張られる腕をぐいっと引き、反射的に足を止めて振り返った彼に、落ち着いた声で尋ねる。


「あなたの家は、お金がなかったの?」

「あぁ。あんたらには想像がつかないくらい惨めなもんだったよ」


ラシュテさんは、冷たい嘲笑を漏らして言った。

お金に困って、仕方なく家族のために犯罪を犯したのだろうか。同情するような事情があるなら、セイディーレは血も涙もないような判決は下さないはず。

きっとなにか理由があって、きちんと考えた上での結論を出したに違いない。本当の彼は、そんなに無情な人ではないのだから。


「……セイディーレはきっと、最良の判断をしたはずよ。あなたの気持ちも汲んだ上で──」


なんとか宥めるため説得しようとしたものの、正面からものすごい力で両腕を掴まれ、息が詰まった。

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