華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
エトワルくんの口から本当の名前が出るとは思わず、私はぴたりと動きを止め、彼のほうを振り返った。


「なんで……」

「さっき閣下から聞きました。本当のことを」


神妙な面持ちで説明する彼の後ろから、アンジェも同じような顔をしてこちらにやってくる。

セイディーレ、私が眠っている間に話したのね。でも、どうして?


「山賊が近づいているそうです。閣下が引きつけてくれている間に、姫様は逃げてください」

「っ、嘘……!」


エトワルくんに言われて、私は口元に手を当てた。

山賊がいるだなんて……もうこの場所が見つかってしまったの!?

危機感に襲われるけれど、これで納得できた。セイディーレが突然私を逃がそうとしているわけが。

さっき、彼が部屋の窓から外を見ていたことを思い出す。もしかして、あのときに山賊がいることに気づいたのだろうか。


「ルリ」


落ち着いた声で呼ばれ、はっとして顔を向けると、アンジェが少し眉を下げて微笑んでいる。


「じゃなくて、リルーナ。本当に気をつけて」

「アンジェ……」


彼女を見た途端、急激に騙していたことの罪悪感が湧いてきて、また涙腺が緩んでしまう。

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