華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
少し眉を下げる彼女に、遠慮がちに尋ねられ、古傷が痛むような感覚を覚えた。

彼女が言う通り、私はいまだにあの人を想っている。

冷酷で、無慈悲で。けれど、私の身も心も深く愛してくれた、黒い騎士と呼ばれた彼──セイディーレのことを。


「彼以上に、愛せる人なんていないわ」


私は口角を上げたまま、当然のように言い放った。


彼との恋に溺れたのは、ほんの数日間。

私はもう一度窓の外に目を向け、約一年前のかりそめの蜜月に思いを馳せた。




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