ここにはいられない
「志水さんって榊君と知り合いなの?」
すぐ隣から声を掛けられて、ドキッとしながらチョコレートと鍵を封筒に押し込んだ。
自然に接したつもりだけど、親しく見えていたらしい。
「えっと、友達の友達です。菊池さんこそ知ってるんですか?」
「うん。榊君って入庁した年に農林整備課に配属されたんだけど、そこで2年一緒だった」
保健師として入った私が保健部以外に異動することはまずないだろうけど、行政職の菊池さんは色々な課を回される。
全く畑違いということも珍しくない。
「ち、榊君って都市計画課が最初じゃないんですか?」
異動は基本的には3年サイクル。
私たちは大学を卒業して3年目だから、入庁してずっと都市計画課にいるのだと思っていた。
「榊君は高卒だから・・・えーっと7年目?だから課も3つ目じゃないかな。今は都市計画課にいるんだね」
同い年なのに妙に落ち着いてると思った。
私より2年入庁が早いせいだと思っていたけど、もっと先輩だったのか。
千隼が大学に進学していないことも、今の今まで知らなかった。