ここにはいられない



「ちょっと、いくらなんでも買い過ぎじゃない?」

ホテルのケーキ屋さんは小さくてお高い。
だからなかなか普段は買わないのだけど、それが10個以上!

「よくわからないから、とりあえず全種類一つずつ買ってきた」

「ケーキ好きなの?」

「別に」

「じゃあ、誰がこんなに食べるの?」

「食べられない?」

「私、どんなイメージよ」

「食べられるだけ食べればいいから」

私のお礼はカレーなのに、千隼にもらうお祝いがこれじゃ全然返し切れていない。

「不満?」

豪華なお祝いをもらったのに眉間には皺が寄っていた。
お金以上にたくさんの気持ちを掛けてくれたのに、こんな顔してるなんて・・・。

不自然なことはわかっていたけど、それでも急いでしっかりと笑顔を作った。

「不満なんてない。ありがとう!すっごく嬉しい!」


実は甘過ぎるものはそんなに得意じゃない。
ケーキは好きだけど量はそれほど食べられない。

だけどこれが千隼の気持ちなんだと思ったら、笑顔のまま3つも食べられた。
さすがにそれ以上は無理で、最後の一口もビールで流し込む。

「お腹いっぱい・・・もう無理」

ブルーベリームースとレアチーズケーキとイチゴタルト。
酸味の強いものを選んだけれど、さすがに量が多い。
千隼もイチゴショートを一つ食べただけで、半分以上残っている。

「明日食べれば?」

「朝から?入るかなー」

「無理なら余していい」



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