彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「すみません!落としちゃって、僕!お行儀の悪いことを~」
「気にすんな。拾わなくてもいい。烈司。」
「そーそー、烈司さんが拾うからいいって。」
「すみません・・・」
拾ってもらいながら、情けない気持ちになる。
右手首の傷は、リストバンドで隠してるからいいけど、浅い傷だけど・・・
「ご迷惑をおかけします・・・・」
“凛、どうしてこんなこともできないの?”
“これぐらいできて当たり前だろう、凛!”
出来ない自分が情けなくなる。
昔の記憶も思い出したことで、深く沈む心。
そんな私をすくい上げてくれたのは―――――――
「ばか。甘えるぐらいがちょうどいいんだよ、オメーは。」
「あ・・・」
やっぱり瑞希お兄ちゃん。
そう言うと、私の左手を手に取る好きな人。
「動かないからこそ、キレイにしとかなきゃな・・・」
「あ!?」
優しく微笑むと、温かいおしぼりで私の右手を丁寧に拭いてくれた。
「み、瑞希お兄ちゃん・・・」
「ほら、左手も出せ。拭いてやる。」
「いや、でも、こっちは動くので~」
「めんどうくせぇな~!」
呆れながら言うと、強引に左手をつかむ。
少しぬるくなったおしぼりで同じように優しく拭いてくれた。
「あ・・・ありがとうございます・・・」
「アニキが弟の面倒見るのは、当たり前だろう?」
「え!?そ、そうですか・・・」
(弟か・・・)
どんなに優しくされても、彼から見れば私は男の子。
今の時点では恋愛対象にはならない。
このやり取りだって、単に世話を焼かれているだけ、ラブシーンになんかならないもの・・・
(だけど、いっかぁ♪大事にされちゃってるしぃ~!!)
〔★凛は開き直った★〕