彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
〈女が黒い服を着るのは、返り血を目立たせないために着るって?〉
「・・・あなたは、『美しく見せるため』と言いましたけどね・・・・」
〈そう・・・・黒は女を美しみせ、返り血が目立たないだけじゃない・・・・〉
静かな声でアキアはつぶやく。
〈喪服よ・・・・!〉
「もふ・・・?」
ザアアアアアア―――――――――――!!
〈りんっ!!〉
瑞希お兄ちゃんが私を呼ぶ。
バキバキ!!
その顔が画面から消えた時、崩れた壁がスクリーンを押しつぶしていた。
(やった!あそこから逃げ・・・)
逃げようと思ったけど・・・
フラッ・・・!
「あれ・・・・?」
(足に力が入らない・・・・!?)
無理だった。
「ゴホっ!?」
(体の自由がきかない!?)
まさか、煙の影響が出てきてるの!?
気づけば、灰色だった気体が黒く染まっていた。
(ヤバい!煙が原因で―――――――)
体が動かない。
それだけじゃない。
ゴォオオオォォオ!!
「熱っ!?」
強い熱が体に触れる。
「火が・・・!?」
火が回る。
生き物のように、うねりながら、私の安全地帯を脅かしていく。
「だめ・・・こんなところで、死ね、ない・・・!」
(それなのに―――――――)
紅蓮の炎が私を囲んでいく。
おかげで四方をふさがれて、出れない。
(空気が、酸素っ、酸素―――――――――!!)
煙をさけて地面に伏せる。
煙は上へ向かうから、体を低い姿勢にすれば呼吸が出来るはずなんだけど。
「ゲホゲホ!ゴホゴホ!ゲホッ!」
苦しい。
息ができない。
助けて、お兄ちゃん
「た・・・・」
『助けて』と言いかけて口を閉ざす。
ここで絶望的な言葉を言えば、それを望んでいる女を喜ばせてしまう。
瑞希お兄ちゃんを悲しませてしまう。
だから――――――――――――
「た・・・・・」
『た』で始まる、別の言葉を言った。
「楽しいね・・・・」
楽しかったと過去形で言うのでもなく、楽しいかと敵を皮肉るでもなく。
(・・・・・・・『た』から始まる『無難な』言葉は、それぐらいだよね・・・・?)
我ながら意地っ張りだと思う。
熱さと、息苦しさで、体の力が抜ける。
もう声さえ出なかったけど、笑顔だけは保った。