彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)





〈女が黒い服を着るのは、返り血を目立たせないために着るって?〉

「・・・あなたは、『美しく見せるため』と言いましたけどね・・・・」

〈そう・・・・黒は女を美しみせ、返り血が目立たないだけじゃない・・・・〉





静かな声でアキアはつぶやく。





〈喪服よ・・・・!〉

「もふ・・・?」




ザアアアアアア―――――――――――!!

〈りんっ!!〉






瑞希お兄ちゃんが私を呼ぶ。





バキバキ!!





その顔が画面から消えた時、崩れた壁がスクリーンを押しつぶしていた。





(やった!あそこから逃げ・・・)




逃げようと思ったけど・・・





フラッ・・・!


「あれ・・・・?」





(足に力が入らない・・・・!?)




無理だった。




「ゴホっ!?」


(体の自由がきかない!?)



まさか、煙の影響が出てきてるの!?

気づけば、灰色だった気体が黒く染まっていた。





(ヤバい!煙が原因で―――――――)





体が動かない。




それだけじゃない。






ゴォオオオォォオ!!


「熱っ!?」





強い熱が体に触れる。




「火が・・・!?」




火が回る。

生き物のように、うねりながら、私の安全地帯を脅かしていく。





「だめ・・・こんなところで、死ね、ない・・・!」



(それなのに―――――――)






紅蓮の炎が私を囲んでいく。

おかげで四方をふさがれて、出れない。





(空気が、酸素っ、酸素―――――――――!!)





煙をさけて地面に伏せる。

煙は上へ向かうから、体を低い姿勢にすれば呼吸が出来るはずなんだけど。





「ゲホゲホ!ゴホゴホ!ゲホッ!」





苦しい。

息ができない。

助けて、お兄ちゃん





「た・・・・」



『助けて』と言いかけて口を閉ざす。

ここで絶望的な言葉を言えば、それを望んでいる女を喜ばせてしまう。

瑞希お兄ちゃんを悲しませてしまう。

だから――――――――――――





「た・・・・・」






『た』で始まる、別の言葉を言った。






「楽しいね・・・・」






楽しかったと過去形で言うのでもなく、楽しいかと敵を皮肉るでもなく。




(・・・・・・・『た』から始まる『無難な』言葉は、それぐらいだよね・・・・?)




我ながら意地っ張りだと思う。

熱さと、息苦しさで、体の力が抜ける。

もう声さえ出なかったけど、笑顔だけは保った。



< 315 / 453 >

この作品をシェア

pagetop