BAD & BAD【Ⅰ】
階段を駆け上り、サボり場所の定番である屋上の重い扉を開ける。
屋上に一歩踏み入れると、清々しい風が私を包んだ。
あー、気持ちいいー!
空には灰色の雲が浮かんでいるけど、現時点では雨はひと粒も降っていない。
少しジメジメしている気がしなくもない。
午後から降り出しちゃうかもしれないな。
空を眺めていたら、背後から再び扉が開く音がして、背中を反らした。
逆さまになった視界に、扉を映す。
「あ」
「うげ」
このままブリッジしそうな私から、たった今屋上にやってきた十蔵寺剛は露骨に目を逸らした。
今、うげって言った?何その、カエルみたいな声。私の反り方がそんなに素晴らしかった?
てか、こいつもサボりか。
私は元の体勢に戻り、十蔵寺剛を気に留めながら、給水塔に登ろうとした。
お気に入りのサボりポジションは、こいつには譲らない!