BAD & BAD【Ⅰ】
若干不安げな剛に、作戦について詳しく説明した。
説明し終えた頃には、剛の表情は大分穏やかになっていた。
「そんなうまくいくもんなのか?」
「うまくいかせるんだよ。でも、これには神雷の協力が必要不可欠だから、この作戦のことを神雷に言ってもいいよね?」
「い、いいけどよ……」
「剛も作戦に加わってるってことは、内緒にしといてあげるから安心しなって」
わかりやすく怯えてるなぁ。
わからなくもないけど。
昨日真実を確かめに大宮ツインズ(と私)が剛に会いに来たとしても、剛の本心を知っているのは私だけで、神雷には未だに裏切り者のレッテルが貼られたままだ。
神雷にわずかな希望があったとしても、昨日芽吹いたばかりでいつ消えるかわからない。
何もかも全部、もう言っちゃえばいいのに。
男のプライドが邪魔してるのかな。
全てが終わるまで、裏切り者でい続けるつもりなのかも。
……やっぱり、あんたは、アホだわ。
「夏休み前日の、7月20日。夏休み前最後の学校が終わって、浮かれている学生だらけの繁華街で、作戦を決行するよ」
「わかった。俺はその日に計画の現状を見てほしいとかなんとか適当に言って、おじいさまを繁華街に誘導する」
「うん、頼んだよ…………ククッ」
「突然笑い出してどうした。怖ぇよ」
「ずっと耐えてたんだけど、もう、げ、げんか……プッ、あははは!!」
「?」
「あんたが、おじいさまって呼ぶとか、ほんと、無理……っ」
笑い転げる私に、剛はいつの間にか解かれていた警戒心気づくことなく、録音レコーダーの存在を忘れ、心底呆れていた。