BAD & BAD【Ⅰ】
すっかり呼吸が元通りに整えられた桃太郎は、既に重い扉を開けて洋館の中に入り、
洋館内にある調理室の冷凍庫に、副総長のアイスを入れに行っていた。
あ、桃太郎に、私のタオルを奪われた。
「ほら、俺らも行くぞ」
「あ、う、うん!」
副総長の大きな手が、私の髪をかすめた感触がまだ残っている。
すぐに離れてしまったその手が、あまりにも大きくて。
つい、ときめいてしまった。
た、多分、副総長の無気力に隠れた優しさを知ってしまったからだ。
えーっと、こういうのなんて言うんだったかな、うーんとうーんと……。
あっ、そうだ!不意打ちってやつだ!
やる気なさそうなくせして、私を胸キュンさせるとは、なかなかやるな。
見直したよ!
……ていうか、どうして私も撫でられたの?
私もペットのように思われてるってこと?
それはしゃくだから、やっぱり前言撤回。見直したってのはナシで。