騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「貴方は、とても気高く、心の美しい人」
どうして今、ビアンカはルーカスのことをそんな風に思ったのかはわからない。
けれど不思議と、ビアンカには確信があった。
ルーカスは、ビアンカを手に入れるために彼女の祖国を守ったのだと言ったけれど。
きっと彼は、ビアンカが手に入らずとも、彼女と彼女の祖国を守ってくれていただろう。
「ルーカスは……冷酷無情なんかじゃない」
「…………」
「だって、手折られた一輪の薔薇にさえ、慈悲をかける人だもの」
そこまで言ったビアンカは穏やかに目を細めると、ルーカスを見上げて微笑んだ。
記憶の中の、小さな少年。彼は今も、ビアンカの心の中にハッキリと焼き付いたままだ。
「……覚えていたのか」
ぽつりと、それだけを言ったルーカスは、口を噤んだまま眉根を寄せた。
それは、不愉快だと言っているようにも見えるけれど──ビアンカには、彼が照れているように見えて可笑しくなる。
「ふふっ」
「……笑うな」
「だって、なんだか嬉しくて」
ビアンカは、なんとなく、ルーカスという人を知れたような気がして嬉しくなった。
彼と過ごすこの部屋の中で、彼のことを心の底から怖いと思ったことはない。
なぜなら彼は常にビアンカに優しく、温かかったから。
確かに彼は、冷酷無情な騎士団長なのかもしれない。だけどビアンカを見る彼の目はいつだって真っ直ぐで、一途だ。