騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「馬子にも衣装です、ビアンカ様。どうか、この美しいドレスに恥じない行動をなさってください」
……いい加減、この失礼な侍女を解雇しても良いだろうか。
アンナの言葉に別の意味で顔を赤くしたビアンカは、フンッ!と鼻を鳴らすと改めて、鏡の中の自分に向き直った。
「……アンナ、見てなさい。ノーザンブルの名に恥じぬよう、更にはルーカスの顔に泥を塗らないよう堂々とやってくるから」
こうなればもう、やけくそだ。
「ええ、それはもう、お手並み拝見でございます、姫様」
大袈裟に両手を広げたアンナには、主を敬うという心はないのだ。絶対。
たかが、晩餐会。されど、晩餐会。
ノーザンブルでも何度もゲストをお迎えしたことはあったし、その通りにやれば失敗なんてしないはず。
いつも通り。王女らしく振る舞えば、きっと、どうにかなるはずだ。
いいえ、絶対どうにかしてみせるとビアンカは開き直った。
「──ビアンカ様、お支度は整いましたでしょうか」
と、ビアンカが再びフンっと鼻を鳴らした直後、突然、部屋の扉が叩かれた。
弾かれたように振り向くと、聞き慣れた声が再度、扉の向こうで木霊する。
「本日、王宮内の警備の責任を任されました、ジェドでございます。ご挨拶に参りました」
「ジェドさん?」
女官の一人が扉を開けると、王立騎士団の団員でありルーカスの部下であるジェドが部屋の前に佇んでいた。
今日も騎士団の黒い制服に身を包み、スッと背筋を伸ばして立つ彼は清廉かつ精悍で男らしい。