騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「本当に、見事ね……」
庭園の中に歩を進め、大きな花を咲かせている赤い薔薇の前で足を止めたビアンカは、思わず頬を緩ませた。
凛と咲く薔薇がルーカスと出会った日のことを思い起こさせ、胸の鼓動が速くなる。
(……どうしても、今、ここに一人で来たかった)
幼い頃、父に連れられてやってきたセントリューズ。
あの時も今日と同じように、晩餐会が開かれるためにビアンカはこの王宮にやってきたのだ。
それが今回不思議な縁で、セントリューズ王弟殿下の妻として晩餐会でゲストたちを迎える立場となった。
あの頃の自分と、今の自分……。ここでまたルーカスと二人で会えたら、もしかしたらルーカスの言っていた“約束”というものも、思い出せるかもしれない。
「おや……そこにいらっしゃるのは、どこの国の姫君かな?」
と、ビアンカが美しい薔薇の前で想いを馳せていたら、突然、背後から声を掛けられた。
弾かれたように振り向くと、でっぷりとした体格の良い男が三人の衛士を従え、こちらを見て微笑んでいる。
「私はダラム国の国王である。どうやらあなた様も、今宵の晩餐会に招かれた客人とお見受けするが……」
ダラム国。それはセントリューズに継ぐ大国の一つで、近年では畜産事業で近隣諸国に名を馳せている。
セントリューズとも代々良好な関係を築いてきている、友好国の一つだ。