騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「恨むんなら、あの男を恨めよ。あの男に嫁ぎさえしなければ、こんなことにはならなかった」
「……っ、けほっ、ゴホッはっ」
「さらばだ、憐れな姫君よ」
言いながら男はビアンカの首元から手を離し、徐ろに立ち上がった。
ゆっくりと、引き抜かれたサーベル。
ビアンカは床に身体を投げ出されたまま、もう起き上がる気力もなかった。
朦朧とする意識の中で、男の構えたサーベルが、怪しく光る。
(……ああ、もうダメ。きっと、このまま殺される)
つい先ほど、ビアンカはルーカスへの気持ちを自覚したばかりだというのに。
こうもあっさりと殺されるなんて神様もイジワルだ。
ルーカスとは喧嘩したままだし、こんなことになるなら喧嘩なんてするんじゃなかった。
せめて、もう一度だけ。もう一度だけ、ルーカスに会いたかった……というのはワガママなのか。
会ったら彼に、短い時間ではあったけれど幸せだったと伝えたかった。
貴方が好きだと、ルーカスに伝えたかった──と。ビアンカが全てを諦め目を閉じた、その時。
「……っ!?」
突然、部屋の扉が豪快に吹き飛んだ。
「な、なんだ……!?」
男が弾かれたように振り向いて、身構える。
視線の先には無残な姿で飛び散った木の扉が転がっていて、大きな木片が床に倒れるビアンカの隣で弾んで止まった。
(な、何……!?)
あと少し横にズレていたら、ビアンカの顔面に直撃していたところだ。
お陰で遠退きそうになっていた意識が、一瞬で現実へと引き戻された。