騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「それなのに突然現れたお前とお前の率いる黒翼の騎士団に、我が軍はあっという間に撃滅された。それからというものアストンはセントリューズには逆らえぬ、臆病な国に成り下がった。軍は解散、命からがら逃げ切った俺は、アストンには帰れずに国を転々とする日々を送っている」
「それで……どうして貴様は、王宮内に?」
「ハハッ、それはもちろん、俺を拾ってくださった方がいたからさ! 憐れな俺に慈悲をかけ、もう一度チャンスをくれたお方がなぁ」
男の言葉に、ルーカスが眉根を寄せて押し黙った。
男に、慈悲をかけた人間がいる?
つまり、その人物が男が王宮内に侵入できるように手引をしたということか。
だとしたら、一体誰が、そんなことをしたというのだろう。
「それにしても、案外ここが見つかるのも早かったな」
「……貴様のような奴が潜む場所など、見つけるのは容易いことだ」
しっかりと剣を握ったルーカスは、男へと静かに向き直った。
互いに睨み合う両者。ルーカスの目には隠しきれない怒りが滲み、纏う空気は殺気立っている。
「お前につけられた、この傷が今、疼いて仕方がない……」
べろり、男が見せ付けるように頬の傷を撫で、唇を舐めた。
「今日まで何度、お前と再び対峙する日を夢見たことか! 今こそ、復讐の時は来た!! まずはお前を虫の息にしてから、妃を目の前で殺してやろう!!」
男が声を荒げた直後。
ブンッ!と、力任せに振るわれた剣が、空を切った。男の剣を華麗に交わしたルーカスは、一歩、男と距離を取る。