騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ダ、ダメ……っ!!」
息一つ乱していない彼は、今、まさに振り下ろさんとしていた剣を止め、自分の身体に抱き着くビアンカを見て息を呑んだ。
「ビアンカ……?」
「ルーカス……ダメ、殺さないで」
その言葉に、ルーカスは不愉快そうに眉根を寄せた。
「何故だ。この男は、お前を殺そうとしたんだぞ」
彼の言うとおりだ。男はビアンカだけではなくルーカスの命まで狙っていた。普通なら恩情をかける余地もない。
「でも……それでも、殺しちゃダメ。だって、この人にまだ、聞かなきゃならないことがあるのよね?」
男は先ほど、自分にチャンスをくれた人間がいたのだと言っていた。
それを聞いてビアンカですら、その人間が王宮内に精通するものであると気が付いた。
なぜなら王宮内に精通するもの以外で、部外者の男を引き入れることなど不可能に近いのだから……。
だから。きっと……いや、絶対に、ルーカスだってわかっているはずだ。
男の命を今ここで奪うのは、得策ではないということを。
「この人を裏で手引きしたのが、誰なのか……聞き出さなきゃ、あなたが困るわ」
「そんなもの、あとでいくらでも洗い出せる。この男の足跡を辿れば、どうにでもなるだろう」
「で、でも……それでも、殺すのはダメ」
「……何故?」
「ダメなものはダメ。絶対、ダメ!」
思わずギュッと彼のシャツを掴む手に力を込めると、ルーカスが数秒考え込むような間を開けたあと、呆れたような息を吐いた。