騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
(……この男に怖い目にも遭わされたし、本当なら庇いたくなんてない)
それでもビアンカは、自分の目の前で命が奪われる瞬間を見過ごすことなどできなかった。
黒幕を捜そうなどというのは体の良い口実だ。
たとえこの男が、許されない罪を背負っていたとしても……。命を奪うのは、間違っている。
「……そんな目で、俺を見るな」
「へ?」
「俺はお前の、その甘えた目に弱い」
再び小さく息を零したルーカスは、構えた剣を下ろして鞘に収めた。
「ルーカス……」
「お前が願うなら……仕方がない。男の処遇は、このあとじっくりと決めよう」
言いながら、ルーカスは一度だけ倒れている男へと鋭い目を向ける。
男を生かすことに納得したというわけではないみたいだけれど……とりあえず、この場で手を下す選択は、踏みとどまってくれたみたいだ。
ビアンカが安心して息を吐くと、ルーカスの表情から怒りが抜けた。
「ルーカス、ありが──」
「ビアンカ……無事でよかった。助けに来るのが遅れて、すまなかった」
ぎゅっと、力強く抱き締められた身体。ビアンカの言葉を遮って与えられた熱は想像以上に熱くて、思わず目には涙が滲んだ。
ルーカスと、喧嘩をしたばかりだったのに。
ルーカスは怒っていたはずなのに、それでもこうして助けに来てくれた。
それを思うだけでビアンカの胸は締め付けられて、彼への愛しさばかりが溢れ出した。
「ビアンカ……」
慈しむような声色でビアンカの名を呼んだルーカスが、ゆっくりと彼女の頬を撫でる。